虫歯によって起こる頭痛の中には命に関わるものもあります。これらの頭痛が起こるメカニズムと対処法について解説していきます。
虫歯と頭痛、一見関係が無いように感じるこれらの症状には、深い関係があります。虫歯によって引き起こされる頭痛は主に4つあり、「緊張型頭痛」「上顎洞炎による頭痛」「顎関節症による頭痛」「脳炎・脳静脈血栓症による頭痛」です。放置すると命に関わるものもあるため、よくある病気だと安心せずに、早めに受診・治療をするようにしましょう。
(1)メカニズム
虫歯と共に最も発生しやすい頭痛が“緊張型頭痛”です。緊張型頭痛とは、機能性頭痛(慢性頭痛)の1つで、身体的・精神的ストレスが原因となります。身体的・精神的ストレスによって頭を支える筋肉が凝り、頭痛が発生すると考えられています。ただし、虫歯の場合はストレス以外にも要因があり、虫歯になっている歯をかばい、片側ばかりで噛むことで首や肩が凝り、頭痛を発生させてしまうと考えられています。
(2)対処法
緊張性頭痛は、頭を支える筋肉の血行不良が原因で発生しています。入浴・運動・マッサージで血行を良くし、凝りがほぐされると痛みは解消されますが、虫歯の治療をしない限り根本的には改善しませんので、早めに虫歯の治療をすることが大切です。
(1)虫歯と上顎洞炎
上顎洞(じょうがくどう)とは、鼻の周りに存在する鼻腔とつながっている空洞のひとつです。上顎洞炎は、風邪やインフルエンザ、アレルギー性鼻炎などで引き起こされることが一般的ですが、虫歯が原因で起きる場合もあります。この、虫歯が原因の上顎洞炎を“歯性上顎洞炎”といいます。上顎洞は、上の奥歯のちょうど上あたりに位置しており、歯の根の先と上顎洞はとても近くにあります。虫歯が進行して、細菌が根の先から上顎洞に入ることで歯性上顎洞炎となってしまいます。また、重度の歯周病が原因で上顎洞炎になる場合もあるため注意が必要です。
<対処法>
まず、原因となっている歯を特定する必要があります。歯に被せ物をしている場合など、目で見るだけでは判断できない場合も多いので、レントゲンやCTを使って歯の特定をし、歯の根の治療や根の先に膿が溜まっている場合は膿を排出させます。
(1)虫歯と顎関節症
虫歯になると、虫歯の歯をかばうように噛むため不自然な噛み癖がつき、噛み合わせがずれてしまいます。顎関節症の原因は様々ですが、このように虫歯で噛み合わせがずれた状態で放置することによって顎関節症になることがあり、結果として顎の関節痛や頭痛を引き起こします。顎関節症が頭痛の原因になっている場合、こめかみ近くにある“側頭筋”を傷め、頭痛を誘発している可能性が高いです。
<対処法>
虫歯の治療と同時に顎関節症の治療を行う必要があります。放置しておくと、顎のゆがみが大きくなり顎関節症が悪化してしまう可能性があるため、早めに治療をして、元の噛み合わせに戻していくのと同時に、顎関節症の症状の悪化につながるような顎に負担をかけやすい習慣は避けましょう。
具体的には
a. 片側ばかりで噛む癖
b. 頬杖をつく癖
c. うつ伏せで寝る癖
d. 強く噛みしめる癖
などの習慣は顎への負担が大きいため注意が必要です。
顎関節症の症状と原因については以下のページで詳細に解説しています。
今すぐ治療した方が良い?顎関節症の症状と原因を解説!
稀なケースではありますが、頭痛の程度がひどい場合には、虫歯が原因で“脳炎”“脳静脈血栓症”を引き起こしている可能性があります。免疫力が極端に弱っている方、高齢の方は可能性が高くなりますので、油断は禁物です。
(1)虫歯と脳炎・脳静脈血栓症の関係
虫歯が大きくなり、虫歯の細菌が毛細血管から血液中に入り込んでしまい、全身を巡って脳で炎症を起こしてしまうと“脳炎”に、炎症により血栓ができてしまうと“脳静脈血栓症”になってしまいます。
(2)脳炎・脳静脈血栓症の主な症状
脳炎を引き起こすと、軽い場合は首の後ろあたりが痛くなるような症状が現れます。そこから炎症が重度になってくると、強い頭痛や発熱、吐き気・嘔吐などの症状が現れます。脳静脈血栓症では、脳に血栓ができることにより脳出血を引き起こし、強い頭痛や嘔吐、さらには意識障害やけいれん等の症状が現れ、最悪の場合は死に至るケースもあります。
<対処法>
虫歯の治療は勿論ですが、状況によっては脳外科を受診する必要があります。自分では虫歯によりそこまでの症状になっているとは考えにくいかもしれませんが、あまりに頭痛がひどい場合や、吐き気がある場合には、早めに脳外科を受診するのが良いでしょう。
(1)痛み止めを飲む
市販の痛み止めや、頭痛薬として処方された薬がある場合には、一時的な痛みの緩和を目的に薬を飲むのも良いでしょう。ただし、根本的な頭痛の原因を取り除かない限りは頭痛が繰り返されるため、早めに歯科医院を受診しましょう。
(2)首や肩、頭皮のマッサージを行う
虫歯による緊張性頭痛の場合は、首や肩の凝りをほぐすことで症状を緩和させることができます。また、虫歯により顎関節症を引き起こしている場合は、こめかみ周囲にある側頭筋が硬くなっている可能性があるので、頭皮マッサージで楽になることもあります。
虫歯を放置し頭痛を引き起こしているとき、ひどい場合は脳炎・脳静脈血栓症のように、命に関わる症状が出る場合もあるので、歯科だけでなく脳外科の受診も必要になります。虫歯は放置して自然に治るものではありません。特に歯の痛みとともに頭痛もある場合は、虫歯の他に様々な病気が隠れている可能性があるので、早めの受診、定期的な歯科検診を心がけるようにしましょう。
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