虫歯治療で歯を何箇所も削られた経験のある人は多いのではないでしょうか。歯を削る時の「キーン」という音が苦手な人も多いでしょう。 実は、虫歯だからといって、必ずしも歯を削る治療が必要な訳ではありません。初期の虫歯や、進行する可能性が低い虫歯は、口の中の環境を整え、経過をしっかり見ていくことができれば、虫歯の進行を止められます。しかし、痛みやしみるなどの症状が出てしまっている場合には、削って治療をする必要があります。削らなくても良い虫歯、削らなければならない虫歯、最新の削らない虫歯治療法について、詳しく解説していきたいと思います。
一昔前まで、虫歯治療は「早期発見・早期治療」と言われてきました。「早期発見」はとても重要ですが、「早期治療」については、現在はあまり推奨されなくなってきました。歯は一度削ってしまうと、詰め物が取れたり、劣化したり、二次虫歯ができるなどして、何度も治療をやり直すことになってしまいます。
初期のごく小さい虫歯であれば、口内環境を整えることで再生可能です。また、多少黒くなってしまった虫歯であっても、虫歯の進行を止められる可能性があります。
(1)虫歯の状態を正確に判断してもらう
虫歯の深さは、見た目だけではわかりません。入り口は狭くても、中で大きく虫歯が広がっている場合があるからです。歯科医院ではレントゲンを用いて、虫歯の深さや状態を診断します。虫歯の深さや状態をレーザーで確認できる機器を取り入れている歯科医院もあります。いくら歯を削らない治療を望んでいても、歯の状態が悪く、結果的にさらに虫歯が広がってしまっては意味がありません。歯科医師に虫歯治療の方法について、事前によく確認しましょう。
(2)初期虫歯はフッ素塗布
フッ素には、歯から溶け出したミネラルを再び歯質に取り込む「歯の再石灰化作用」があります。また、歯を虫歯になりにくい強固な歯質にする効果もあります。特に乳歯や生えたばかりの永久歯の場合は、フッ素を取り込みやすく効果的です。
(3)定期検診で虫歯の進行をチェック
定期検診は虫歯を削らないためには必要不可欠です。虫歯は半年もあれば大きく進行するので、初期の虫歯を削らずに様子を見る場合には、忘れずに定期検診を受けるようにしましょう。
(4)虫歯が進行しない口腔内環境をつくる
虫歯は「虫歯菌」と虫歯菌が酸を作り出すための栄養となる「糖」によって引き起こされます。
毎日、丁寧に歯磨きを行い、デンタルフロスや歯間ブラシも使用して、磨き残しの少ない口腔内にしましょう。自分の力だけでは、すべての汚れを取り除くことが難しいので、定期的に歯科医院でクリーニングを受けると良いでしょう。
同時に、食習慣の見直しを行いましょう。糖の含まれた間食が多いと、虫歯になりやすくなります。間食習慣の見直しと、飲み物はジュースでは無くお茶に切り替えていくなどの工夫が必要です。
虫歯が大きく、象牙質にまで進行している場合は、歯を削らなくてはなりません。削らずに放置しておくと、虫歯が歯の神経にまで到達してしまい、神経を取る治療が必要な場合があります。また、虫歯によって歯に大きく穴が開いていたり欠けてしまったりしている場合には、欠損箇所を削る治療が必要になります。
最新の治療法には象牙質まで進行した虫歯であっても、歯を削らずに薬で溶かして除去する方法や、薬によって虫歯菌を殺菌する方法があります。まだまだ認知度が低く、自費治療で施術できる歯科医院も少ないのですが、虫歯治療の方法は進化し続けているので、これからもっと広く行われる可能性があります。
(1)歯を削らずに薬で溶かして除去するカリソルブ治療
虫歯になってしまった歯に、薬剤を塗布して、虫歯に侵された部分を溶かし、特殊な手用器具で軟らかくなった虫歯部分を除去していく方法です。薬剤は、虫歯になってしまった部分にしか作用しないので、健康な歯質を削らずに虫歯を取り除くことができる画期的な方法です。
ただし、神経にまで達した虫歯にはこの治療法は適用できません。歯が痛むほどの状態になる前に、虫歯に気がつき治療を始めるのが大切なポイントです。
カリソルブ治療は日本では2007年に厚生労働省で認可された治療法で自費診療です。歯科医院によって差はありますが、仕上げの詰め物も含めてトータルで1〜3万円程度です。
(2)虫歯に殺菌効果のある薬剤を塗布し蓋をする方法
神経近くまで虫歯が達してしまった場合に、薬剤によって深い部分の虫歯を殺菌し、上から殺菌作用のあるセメントで蓋をした後、詰め物をするために最小限の歯を削り、詰め物を装着します。完全に虫歯を取り除くのではなく、削る部分を最小限にして、深い所を薬剤で蓋をするため、深く削って神経が出てしまうリスクを減らすことができます。
自費診療となり、仕上げの詰め物を含めてトータルで1〜3万円程度になります。
歯医者で治療する虫歯の約70%は、二次虫歯といって、一度治療をした詰め物や被せ物の隙間から始まる二次的な虫歯です。 二次虫歯の治療の繰り返しによって、最終的に歯を失ってしまうなど、歯の寿命が短くなるため、できるだけ歯を削らずに経過をみていく処置が良いでしょう。
虫歯は初期の虫歯であれば、必ずしも削る必要はありません。削らずに経過観察を続けることも可能です。痛みが出るような虫歯になると、神経の治療をしなくてはならず、削らなくてはなりませんので、そうなる前に自身で口の中を虫歯になりにくい環境に整えたり、定期的に歯科検診を受けるなど、虫歯予防に努めることが大切です。 また、最新の歯科治療では、歯を削らずに、虫歯を薬剤で溶かす治療法などがあります。どうしても歯を削りたくない場合は、このような方法も今後検討していくと良いかもしれません。
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