冷たいものを食べたとき、突然、歯がキーンとしみることはありませんか?それは、知覚過敏かもしれません。
日本人の約3分の1が経験したことがある症状と言われています。
今回は、知覚過敏になる原因と、その対処法について解説していきます。
知覚過敏とは、歯ブラシの毛先が歯に触れたとき、冷たい飲食物や甘い物を食べたとき、風に当たったときなどに生じる一過性のしみるような痛みです。虫歯と違い、痛む時間は短く、キーンとしみたと感じた直後に治まります。歯ぐきが痩せて歯の根が露出し、歯の表面のエナメル質が薄くなり、象牙質が表面近くに出てくることで歯が痛みます。
知覚過敏の原因はいくつかあるため、それぞれについて詳しく解説していきます。
(1) 間違った歯磨き方法
硬い歯ブラシでゴシゴシと力任せに磨く習慣があると、歯の表面のエナメル質が傷ついて削れられてしまい、知覚過敏を引き起こします。いくら強く磨いても一度の歯磨きで削られるわけではありませんが、毎日力任せに磨いていると、徐々にエナメル質が削れて知覚過敏になってしまいます。
(2) 歯磨き粉の研磨剤
歯磨き粉には、研磨剤が含まれているものがあります。研磨剤の入った歯磨き粉をたっぷりつけて磨くと、エナメル質が削られ知覚過敏の原因となります。
(3) 歯ぎしり
歯ぎしりもまた知覚過敏の原因の一つです。歯ぎしりによりエナメル質が削れたり割れることがあるため注意が必要です。歯ぎしりの原因は、ストレスや疲れ、噛み合わせの悪さだと言われており、また歯を食いしばる癖も、同様の理由で知覚過敏を引き起こします。
(4) 噛み合わせの悪さ
噛み合わせが悪いと、一部の歯に強い負荷がかかり、歯が削れて知覚過敏を引き起こします。
(5) 歯周病
歯周病は、歯を支える組織が破壊される病気です。進行すると、歯を支える骨(歯槽骨)が溶かされ、歯ぐきが下がり、やがて歯の根や象牙質が露出してしまい、知覚過敏を引き起こす原因となります。
(6) 酸
飲食物の“酸”によって、歯のエナメル質が溶かされ、知覚過敏を引き起こします。酸性度が高い食品の例としては、炭酸飲料・アルコール・柑橘類・梅干し・酢などが挙げられます。酸性の強い食べ物を、長時間口に含んだり、過度に摂取したりすると、いつの間にか“酸”によって歯のエナメル質が溶かされてしまいます。このように食品などに含まれる酸によってエナメル質が溶けてしまう症状を「酸蝕歯(さんしょくし)」と言います。
(7) ホワイトニング
ホワイトニングで使用する薬剤が原因で、知覚過敏を引き起こすことがあります。ホワイトニング薬剤が、象牙質に刺激を与えて歯がしみる場合がありますが、ほとんどは一時的な痛みで、ホワイトニング治療が終了すれば知覚過敏の症状は落ち着きます。
(8) 歯石除去後
歯科医院で、歯石を除去する治療をした後、知覚過敏の症状が出ることがあります。歯石によって覆われていた象牙質が露わになるためだと考えられます。一方、歯石除去をしないのも歯周病の大きな原因となりますので、必ず定期的に歯石を除去しましょう。
(9) 加齢
加齢により歯ぐきが下がることで歯の根の表面が露出し、知覚過敏を引き起こすことがあります。
日頃の習慣を見直すことで、知覚過敏を改善できる場合があります。
(1) やさしい力で歯磨きをする
歯ブラシの硬さは“ふつう”のものを使用し、歯ブラシの毛先が多少しなる程度のやさしい力で磨きましょう。強く磨いた方が歯の汚れが取れると思いがちですが、実際には歯に負担がかかるばかりで、汚れの除去効率は悪くなります。
(2) 歯に優しい歯みがき粉を適量使う
歯みがき粉には、様々な薬効成分が含まれているため、知覚過敏用の歯みがき粉がおすすめです。知覚過敏用の歯みがき粉に含まれる硝酸カリウムが歯の神経の周りにバリアを作り、知覚過敏の症状を軽減させます。また、フッ素が含まれた歯みがき粉は、歯の表面のエナメル質を強くするのに効果的です。
(3) 歯を食いしばらない
歯を食いしばる癖は、意識することで減らせます。日中、歯を食いしばっていることに気がついたら、意識して上下の歯と歯を離すように心掛けましょう。
(4) しっかりと噛む
しっかりと噛むことで、唾液の分泌が促進されます。唾液には、再石灰化作用があり、歯から溶け出したカルシウムやリンなどのミネラルを再び歯質に取り込みます。歯質が修復される事によって、知覚過敏の症状が治まってきます。また、キシリトールガムを噛んで、唾液の分泌を促進させるのも良いでしょう。
知覚過敏が気になったら、まずは歯科の受診をおすすめします。自宅での対処で改善すれば良いのですが、単なる一過性の知覚過敏なのか虫歯や歯周病なのか自分では判断ができないからです。歯科医院で知覚過敏と診断されると以下のような治療が施されます。
(1)知覚過敏用の薬を塗布する
知覚過敏用の薬を塗布することで、症状が改善する場合があります。ただ、知覚過敏用の薬は繰り返し塗布する必要があるので、前述した自宅での対処方法と並行して定期的に歯科医院で治療をするのが良いでしょう。
(2)コーティング剤で保護する
歯のしみる部分に、コーティング剤を塗る方法があります。この方法はコーティング剤が剥がれてしまうと、再びしみる症状が現れる場合があります。
(3)レーザーを当てる
レーザーを当てて、症状を緩和させる方法です。レーザーによって神経を安静にさせることで、知覚過敏の症状を和らげます。
(4)削れた部分を埋める治療をする
歯の根元が大きく削れて、知覚過敏を起こしている場合には、歯科用レジンで削れた箇所を埋め、知覚過敏を改善させる治療方法があります。歯の根元が大きく削れていると、汚れも溜まりやすく、知覚過敏も治りにくいので、歯の根元を埋めた方が効果的な場合があります。
(5)マウスピースを装着する
知覚過敏の原因の一つに“歯ぎしり”があると判断された場合、マウスピースを使用して歯ぎしりによる歯への負担を軽減させる方法があります。寝ている間に無意識に“歯ぎしり”をしているケースが多く、癖になっているため簡単には防げません。そのため、歯ぎしりが原因の知覚過敏には、マウスピースが効果的です。
(6)歯周病の治療をする
知覚過敏を引き起こす原因となる歯周病は、放置すると、歯の周囲の組織(歯ぐき・歯槽骨)を破壊し、最終的には歯が抜けてしまう原因にもなります。知覚過敏の有無に関わらず、歯周病がある場合には、早めに治療を受ける必要があります。歯周病の治療を進めていく中で歯石を除去するため、今まで歯石に覆われていた象牙質が露出することで、知覚過敏が一時的に悪化することがありますが、歯周病の治療は歯を長く守っていくためには必要不可欠です。
(7)歯の神経を抜く
知覚過敏の症状がひどい場合の最終手段です。今まで紹介したいずれの対処法でも改善されず、痛みが強く堪え難い場合には歯の神経を取る処置をします。神経を抜いた歯は、「脆くなりやすい」「変色しやすい」「虫歯が進行しやすい」などのデメリットがあるため、歯を長持ちさせることを考えると、極力神経は残した方が良いのですが、痛みが耐え難いほど強く、しかも長く続く場合の最終手段として神経を抜く治療があります。
いかがでしたでしょうか。知覚過敏の原因は一つではありません。対処法には自宅で手軽に実践できるものから、歯科医院での処置が必要になるものまで、症状に応じた様々な方法があります。自身で判断せず、一度歯科を受診をして自分に合った適切な処置をすることが大切です。
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